三番目のスタンダードは、慎み深さをあらわすメッセージではない。20世紀には資本主義国家と社会主義国家が覇権を争った。そこからはじき出されて第三世界と呼ばれた国々が沸騰しているのが21世紀の現実である。資本主義の市場原理が勝利した訳ではないのは、リーマンショックを見ても分かる。また、人間の自由を、自然の法則が規制するのだととらえるエコロジーの思想も、資本主義の自由と社会主義の規制という概念が横滑りしただけのように見える。それは、芸術(作家の自由を基盤とする)と工芸デザイン(機能の規制)という二つの基準に引き裂かれて、硬直していった近代美術の姿とも重ねて考えられる。21世紀にはあらゆる分野で、三番目のスタンダードが必要とされているのだ。
山田圭一の作品は、美術と工芸のあいだで引き裂かれているのではなく、二つの極を結びつける要としての第三極の姿を示している。それは人間の精神でも、自然の法則でもない、両者が入り交じったモノとしての重みと手触りとともに存在するだろう。

美術評論家 小泉 晋弥
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